【三富の感想文】スナックキズツキ/益田ミリ

こないだ店頭で平積みされていた本が、ドラマになるらしい。それを知ったのは数ヶ月前。はやく始まらないかな〜と楽しみにしていた。

ただ益田ミリさんは大好きなのに、スナックキズツキは未読。ドラマの1話を見てから、大慌てで本屋に駆け込んだ。今日はその『スナックキズツキ』の感想文。

 

この物語は毎回「今日を生きて傷ついている誰か」が、スナックキズツキを訪れる。中にいるママ(トモコ)は、お酒が飲めないからアルコールはおいてないと言いながら、ジュースを出し、カレーをご馳走したりする。そしてその合間に歌いなとマイクを渡し、ギターを弾く。ピアノを弾く。なんだったら、エアギターまで演奏しちゃう。

 

「何を歌うんですか?」訪ねてきた人は皆戸惑う。トモコは「あなたの気持ち」と一言。すると、今日1日抱えてきた思いがなんだか口をついて出てくるのだ。

 

なんで歌ったの?わたし。と思いながら帰るも、きっとその心は入ってきたときよりも軽やかだ。

 

ナカタさんやアダチさんの1日を覗いて「ああ、わかる」と共感する人も多いだろう。そして、いま隣りにいる人も何らかの事情や思いを抱えながら「生きている」ということを改めて実感する。本当に一人ひとりが人生を歩んでいるのだ。

 

わたしたちはともすると、自分のことで精一杯になってしまって、自分や自分が大切にしている人と同じように他の人も感情をもって生きていることを忘れてしまう。

 

みんなが自分のことだけでなくて、周りの人にちょこっと気を配ってあげたら世界が平和になるのに!でも現実生きていれば、自分のことにいっぱいになってしまうよね〜。でもそのことに気づかせてくれて、平和な世界が少しずつ出来上がっているのが、キズツキの世界だ。

 

益田ミリさんは日常のことを描くのがとても上手い。登場人物に何かしら既視感を覚えるのは、その人たちを通してわたしたちが心に抱えていることを思い出すから。それだけでなく、普段は何気なく過ぎ去らせている行動や感情を引っ張り出して、ハッとなることもある。

 

あなたはどの話が心に刺さりますか?

 

今日も誰かがスナックキズツキを見つけて、トモコに出会う。トモコは誰かの心をノックして、自由にしてあげている。わたしたちもトモコになっているときがあるだろうし、サトちゃんやカホになっているときもあるだろう。そうやってみんなみんな生きているんだよな。そう思うと大切な人はより大切に思えるし、嫌いなあの人だってベースは変わらなくたって丁寧に接しようと思える。

 

優しい世界が見えてくる。

わたしは益田ミリさんの紡ぐ世界が大好きだし、こういう世界が必ず現実にも訪れると信じてる。

いや〜、素敵だ。

 

以上、本日も読んでくださりありがとうございました。