3年A組1話~三富的感想文~

これは卒業までの10日間の話である。その10日間に何があったのか、「今」から過去を遡るドラマだ。

 

このドラマの1話目からして引き込まれた大きな理由のひとつに、高校生の気持ちが繊細に描かれているということが挙げられる。

自分の感情をコントロール出来なくて、暴力ふるってしまうところとか、わたしが1番の友達(きらきら)という雰囲気を醸し出したかったりとか、’’大勢から嫌われない”方を選んでしまうところ、自分たちが絶対正しいと思い込んでる謎の正義感をかざし続けてしまったりとか。

 

思い出したら懐かしくて恥ずかしくて、でもこういう思いは誰しも少しは思い当る節があるのではないだろうか。

 

(自殺した澪奈と)「この中だったら1番仲良かったかな。」と言い切った香帆に対して「友達だったのは茅野ちゃんでしょ。」と悪気もなく事実を提示してしまった華。そう声をかけられた茅野さくらだが、香帆と目が合ってしまったためお茶を濁す。そして香帆は代わりに「さくらだってそんなんじゃないよ」と否定する。

 

この一連の流れもわたしには思い当る節がある。言いたいことはあるのに、相手に制圧されて言えなかったことがたくさんある。それと同時に誰かに「言わないで」って威圧して違うことを言ってごまかしたこともある。

 

もともと香帆と澪奈は仲が良かったのだと思う。一緒に帰ろうと声をかけた香帆に対して澪奈がごめん、先約がある、と断ってさくらのところへ向かったシーン。それでそう感じた。誰のものでもないのに、わたしの1番の友達っていうのを持ちたいときがある。わたしのこと1番分かってくれて、いつもそばに居てくれてありがと☆みたいなやつ。わたし以外と仲良くするのは許せん、みたいな思い。でもこれって生徒特有みたいな思いではあるのかもしれない。大学生になってからはそんなこと思わなくなったから、きっと学校という狭い世界だけで生きることを強要されている時期はそう思うのだろう。

 

だから澪奈が自分ではなくてさくらと仲良くしていることが、香帆にとっては気に入らなかった。強いもの、香帆は。だから言い方は悪いけれども捨てられたことに怒っていた。手のひら返しだよ、無視するっていうのは。澪奈のステータスと友達になってたのかな?と思うくらいいきなりの手のひら返し。それで君の思いは消化されたか?数年後には後悔することになる消化の仕方だったけど。そういった思いすべてをこめての香帆からさくらへの台詞。「自分が1番の親友みたいに語っちゃってさ、そういうのむかつく」吐き出した言葉はそのまま香帆がそうなりたかった、と言っているようにしか聞こえない。

 

一方大勢に飲み込まれてしまったさくら。なぜ大勢が正しいと思い込み、その世界で自分だけが平和に生きようとして、大切なものを失いそしてそれが大切なものだったと後から気づくのだろう。この経験もあるからよく分かるけど、やっぱりその世界の中でなんとか生きていくしかない、って思ってしまうからそうなってしまうのか。

 

そういった世界を経てからの今でしょ、って。成長するでしょう、って言葉もあるかもしれないけれど、誰かを傷つけて成長する環境は正しくない。スタートから歪んでいるこの世界ではあるけれども、この環境を打破していくことは可能だ。その環境は変えなければいけない。成長の仕方も色々ある。だから、大勢が言ってる正しさのようなものには従わなくてもいい。それを選択できるか?というのはとても難しいことだけれども、そう出来る環境を作っていきたい。

 

柊先生は言葉を紡ぐ。みんなに対して語りかける。20時というタイムリミットをすぎて1つの解答が出てから。「なぜクラスメイトが死ななければならなかったのか」それを考えてほしいと。

 

本気になれよと体中から叫んでいる柊先生。何が目的で始めたことなのか全部は分からないけれども、変わってほしいと願っていることは分かった。それと同時にここまでしないと本気で考えられない「生徒」への嫌悪感が募る。自殺した人がいるのに目をそむける?自分たちには関係ないと切り捨てる?その人のことを背負って生きろなんてことは言わないけれども、自殺というシナリオは入学当初にはなかったよ。外的環境をつくってきたのはお前らだろう。そしてクラスメイトに対して「お前が間違えたんだから、お前が死ねよ」そんな人たちと一緒に生きている、ということが苦痛だ。人の自己中心さ、悪意を受け止めることが出来ない。その思いが充満している世界は正しくないし、ぶち壊したい。

 

「どうしてそんなに心が貧しいのか......ようは心が空っぽなんだよ!!!」

「......一体何から卒業するって言うんだよ」

「そして変わるんだ。......変わってくれ」

生徒を殺す前に柊先生は語り尽くす。吐き出す。

ここまですれば変わるだろうと願っている柊先生の願いは届くのか。生徒を監禁し、生徒を殺してまで。人道的におかしなことをしていることは分かっている。しかしその背後にある思いは何だろう、と真剣に見てしまう。

 

ここから先どうなるのか脚本と出演されてる女優俳優陣の腕の見せ所なのかな、と思う。1話は演技によってすごくのめりこみながら見ることが出来た。ネットでは賛否両論だったけど、わたしはこのぶっとび設定もすんなり受け入れて、とりあげられている問題に対して深く考えている。毎週わくわくしながら(というのは少し不謹慎なのかもしれないが)見るだろう。

 

本日も読んでくださりありがとうございました。